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【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。

      2016/05/26

「……はい。―――ッ!!」

電話に出た瞬間、男の顔色は変わる。

「は、はい――!!……いえ、実は……」

そして男は背を向けて、何かを語り始めた。

「―――え!?で、ですがそれは……!!………はい……はい。分かりました……では……」

電話を終えた男は、他の男達に何かを耳打ちする。

それを聞いた男達は、一様に驚きの表情を浮かべた。

……しかしすぐに、オラ達に背を向けて、離れはじめた。

「……なんだ?」

不思議に思ってると、男の一人が後ろを振り返った。

「……今日のところは、お嬢様をお任せいたします。ですが、何かあった時は……」

「……わかってますって。煮るなり焼くなり、好きにしてください」

オラの言葉を聞いて安心したのか、男はそれ以上何も言わずに、立ち去って行った。

「……いったい、どうしたんでしょうか……」

「……さあね。とにかく、駅に向かおう。電車の時間が、迫ってるし」

腑に落ちないところもあったが、オラ達は、再び駅に向かい始めた。

電車に乗ったオラ達は、線路を走る振動に揺られていた。

窓の外の音は走行音に消されて、単調な音はどこか心地よく感じる。

気が付けば、あいちゃんは眠ってしまっていた。

オラの肩に、頭を預けて。

どうするか考えたけど、起こすのも悪いし、そのまま寝かせることにした。

そんな彼女の髪からは、仄かに海の香りがしていた。

電車は次の駅に止まる。

すると、ホームから、一人の老人が入ってきた。

初老くらいだろうか……しかし身なりは、とてもしっかりしている。スーツを着こなし、白髪の髪を揃えていた。その雰囲気は、威厳に溢れている。

その老人は電車に入るなり、真っ直ぐオラのところへ近付いてきた。

そして、優しく声をかけてきた。

「……隣に座っても、よろしいでしょうか?」


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「……え、ええ……どうぞ……」

「ありがとう……」

そして老人は、オラの隣に座る。

電車の中は、オラ達3人しかいない。だから席だってガラガラだった。

それなのに、わざわざオラの隣に座るなんて……でも、その理由は、なんとなく分かっていた。

しばらくの間、オラと老人は、対面の窓の外を眺めていた。

夕陽が窓から射し込み、オラ達の顔をオレンジ色に染めていた。

少し時間が経った頃、老人がふいに話しかけて来た。

「……隣のお嬢さん、よく眠っていますね」

「え?……ああ、はい。海で遊んだので、きっと疲れたんでしょう」

「そうなんですか。……なるほど、とても安らかに眠っている。本当に、気持ちよさそうだ……」

老人は、朗らかにあいちゃんを見つめていた。

そして視線を窓に戻し、再び口を開く。

「……実はですね、私にも、娘がいるんです」

「……そうなんですか……」

「はい。大切な一人娘でしてね。私は、その子のために、色々なことをしてきました。色々なものを与えてきました」

「………」

「……ですが、どうやら私は、その子が一番求めている時に、何も与えることが出来なかったようです。

――その子の御友人から、怒られてしまいました……」

「………」

「その友人の方には、心からの謝罪と、心からの感謝をお伝えしたいんです。

娘は、親の私がこう言うのもなんですが、とても優秀です。私達が期待することを、それ以上のことをして応えてくれていました。

――ですが私は、どうやら勘違いをしていたようです。そんな私達の期待を、娘は重く感じていたのかもしれません。

娘もまた、一人の人間……そんな当たり前のことを、私は、忘れていたんです。

忘れて、仕事に追われて、娘の手を、握り返してやれなかった……

それが、とても辛いんです」

老人は、表情を落としながらそう語る。

「……不器用、なんですね」

「……そうですか?」

「はい。あなたは、とても不器用です。……彼女と、一緒ですよ」

オラがあいちゃんに視線を送ると、男性も彼女を覗き込んだ。

「……彼女も、本当は両親に甘えたいんですよ。ですが、そのやり方が、よく分からなかったようです。

わからないから、家出まがいのことまでしちゃってるんです」

「ほほう……家出、ですか……」

「はい。……ただ、彼女は、知ってほしいんだと思います。

自分の気持ちを、想いを、葛藤を、苦悩を、聞いてほしいんだと思います。

ですが、忙しい両親に気を使うあまり、それが上手く伝えることが出来てないんです。

……ほら、あなたに似てるでしょ?あなたもきっと、そうなんじゃないんですか?」

「……さあ、私には分かりません……」

「分からないなら、一度娘さんと話してみてください。夕ご飯でも食べながら。

オラも、妹と一緒にご飯を食べるんです。そして、色んな事を話すんです。

買い物での出来事、仕事での出来事、テレビの内容……くだらないことも多いですが、そうやって話しながらご飯を食べるの、けっこう、いいもんですよ」

「……」

「……あなたなら、きっと娘さんと上手くやれますよ。だってあなたからは、娘さんへの愛が、しっかりと見えてますから。

必要なのは、ほんのちょっとしたきっかけなんです。ただ、それだけなんです」

「……そのきっかけが、よく分からないんですけどね……」

「そんなの簡単ですよ。

――ただその人の帰りを待ってればいいんです。そして、帰ってきたらこう言うんです。

『おかえりなさい』、と……」

「………」

「あなたの娘さんは、もうすぐ家に帰ります。

――帰りを、待っていてあげてください」

「……そうですね。そうします」

そして老人は、徐に席を立った。

老人は、そのままドアの方に歩く。そしてオラに背を向けたまま、再び話しかけて来た。

「……もし娘が、あなたのような人と巡り合っているとするなら、それはきっと、娘にとって最も幸運なことかもしれませんね」

「……違いますよ。最も幸運なのは、あなたのような、娘さんを心から想っている親の元に生まれたこと、ですよ……」

「ハハハ……恐縮です……」

そして電車は、次の駅に止まる。

ドアが開くと同時に、老人は電車を降りる。そしてホームから、最後に声をかけてきた。

「……その女性を、頼みましたよ」

「……はい。ちゃんと、家に送り届けます」

最後に老人が一礼すると、ドアは閉まり、電車は駅を離れはじめた。

しばらく走ったところで、オラはあいちゃんを見る。

彼女は、依然としてオラの肩に顔を埋めたまま、動かなかった。

そんな彼女に、囁きかけるように、声をかけた。

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