【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「……聞くも何も、普通の話だよ。付き合っていた彼女から、僕がフラれた。
――ただ、それだけのことさ。聞いても、つまらない話だよ」
風間くんは、淡々と話す。
それは間違いない。だが、それだけじゃない。風間くんは、話を早く終わらせようとしている。
つまりは、オラに話しにくい何かがあるということ。
「……風間くん、友人としてお願いするよ。あの日、何があったの?」
「……」
「凄く言い辛いことかもしれない。だけど、話して欲しい。
それはきっと、オラが知らなきゃいけない、とても重要なことだと思うから……頼む……」
「………」
風間くんは、オラの目を見ていた。何かを探るように、確かめるように。
そんな彼を、オラは見続けた。視線を逸らさず、ぶつけた。
「……はあ。そう言えば、お前も強情だったな、しんのすけ……」
大きく息を吐いた風間くんは、諦めたように呟く。そして視線を前に戻し、目を細めて話し出した。
「……もう、聞いてるかもしれないけど。僕な、海外の支社を任せられることになったんだよ」
「……ああ、聞いたよ」
「だろうな。――ホント、大出世だよ。言わば、僕は支社長になれるんだ。
これまで頑張ってきた苦労が実ったんだ。こんなに嬉しいことはない。僕は、意気揚々と彼女――ひまわりちゃんに報告したんだ」
「………」
「そしたらね、彼女言ったんだ。“私は、どうなるの?”って。僕は、すぐに彼女が言わんとすることが分かったよ。
……彼女は、本気だったんだ。本気で僕と、一生添い遂げるつもりだったんだ。だから僕が海外に行くことに対して、自分はどうなるのかって聞いてきたんだよ。
本当に、嬉しかったな。海外の支社を任され、好きな女性に本気で想われて……人生で、最高の瞬間だった」
風間くんは、少し照れるように話していた。……でも、その顔は長くは続かなかった。すぐに視線を落とし、呟くように話した。
「――しんのすけ、これから先は、怒らずに聞いてほしい」
「……分かった」
オラの返事を待って、風間くんは切り出す。力強く。はっきりと。
「……彼女の想いに触れて、僕は決めたんだよ。一生、彼女を大切にしよう。添い遂げようって。
――だから僕は、彼女にプロポーズしたんだ。――結婚を、申し込んだんだよ」
「………」
雨は、更に激しさを増していた。
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「そしたらさ、見事にフラれたよ。僕の思い違いだったみたいだ。……まったく。カッコ悪い話だよな、ホント……」
彼はそう話しながら、苦笑いを浮かべていた。
だけど、オラは気になっていた。
ひまわりは、なぜ風間くんとの別れを選んだのだろうか……。
彼女の想いは、オラが見ても分かるくらい本気だった。にも関わらず、彼女は別れを選んだ。
……その理由は、容易に想像出来た。
だからこそオラは、両手を握り締めた。握る拳は震える。我慢するのに、必死だった。
「……風間くん。ひまわりは、なんて言ってた?」
「……」
「……教えてくれ。風間くん……」
風間くんは、少し躊躇していたようだ。それでも、話してくれた。
「……彼女が言ったのは……」
「………」
「―――――、―――――」
「………」
風間くんの言葉は、囁くように、静かにオラの耳に届いた。
雨音は激しく響く。だけど彼の声は、それを潜り抜け、やけにはっきりと聞こえた。
(………クソ……)
思わず、そう思った。
それは、オラ自身に対する言葉だった。
風間くんと別れ、オラは家路につく。
雨は一段と強く降り注いでいたが、オラには傘をさす気力すらなかった。
(……ひまわり……)
ずぶ濡れになりながら、雨の中に彼女の姿を思い浮かべる。
大切な家族。大切な妹。
いつも明るく、笑顔を向ける彼女。
……オラの、たった一人の、家族……
「………」
無言で、玄関の扉を開ける。
「――おかえりー」
ドアの音を聞いたのか、ひまわりは奥から出て来た。
「うわっ!ずぶ濡れじゃない!お兄ちゃん、傘持っていかなかったの!?」
雨に濡れたオラに、ひまわりは驚いていた。
しかしオラの耳は、彼女の言葉を素通りさせる。
ひまわりの顔を見た瞬間、風間くんの言葉が脳裏に甦っていた。
―――彼女、泣きながら言ってたよ。“お兄ちゃんを一人には出来ない”って―――
「……ひまわり……」
無意識に、口が動いた。
「うん?なぁに?」
一度目を閉じ、頭の中の想いを整理する。
ひまわりの言葉、顔……そして………
「――この家を、出ていけ………」
「……え?お、お兄ちゃん……?」
「聞こえなかったのか?――この家を、出るんだ」
「……!」
ひまわりは顔を青くし、激しく動揺しているようだった。
それも当たり前だろう。
ひまわりとはケンカをすることはあっても、ここまでの言葉を口にしたことはない。
にも関わらず、ケンカらしいケンカもしていない今、唐突にそう言われて混乱しているのだろう。
なぜ、オラがそんなことを言ったのか分からない。
なぜ、そう言われたのか分からない。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ……きっと彼女の頭のなかは、そればかりが漂っているだろう。
気が付けば、彼女は涙を流していた。
「……ひまわり……今日、風間くんと会ったよ」
「……!」
「プロポーズ、断ったそうじゃないか……なぜだ?」
「……だ、だって……それは……」
「風間くんが、嫌になったのか?」
「そ、そんなんじゃないよ!……そんなんじゃ、ないけど……」
(……即答、か……)
これで、確信した。
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