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【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。

      2016/05/26

「……だからさ、その幸せ、少し分けてほしいんだ」

「……あいちゃんに、身代金を要求つもりなんですか?」

「そうだよ。いくらにしようかな……。キミのためなら、いくらでも出しそうだけどね。ヘヘヘ……」

ライトの逆光で、四郎さんの顔どころか、姿すらもは見えない。

まるで闇の底から、声だけが響いているようだった。

彼は今、笑ってるのか……それとも、泣いているのか……

しかし彼の口調には、どこか儚さも感じられる。

“引き返せない”……

彼はそう言った。

四郎さんは、本当は止めてほしいのだろうか。

少なくとも、オラの知る四郎さんは、ケチで気弱でスケベだけど、本当はとても優しい人だった。

絶対に、こんなことをするような人ではなかった。

……それなら、どうして……

「……四郎さん……何があったんですか?何があなたを、こんなことまでさせてるんですか?」

「……」

オラの問いを受け、少し、ライトの光が下がった。そして彼の顔が浮かび上がる。

……彼は、涙を流していた。

「……僕はね、必死に勉強して、大学に入った。大学でも一生懸命単位を取って、卒業も出来たんだよ」

「……」

「……でも、就職先が見つからなくてね。当然だよね。年もそこそこ上で、四流大学出身、何の取り柄もない僕なんて、どの会社も欲しくはないだろうね。

――結局僕は、浪人生活に逆戻りさ。

皮肉だよね。大学浪人を抜け出した先にあったのは、就職浪人なんだよ……」

「……」

確かに、四郎さんが大学を出た頃は、ちょうど就職氷河期と呼ばれていた時代……

就職は、そうとう困難だっただろう。

「……それでも、仕事をしないと生活は出来ない。仕方なく僕は、アルバイトをしたんだ。

……でもそこは、地獄だったよ……」

「地獄……」


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「僕ね、色々鈍いんだ。だから、仕事を覚えるのが遅くてね。

年下のバイトの先輩にはバカにされ、罵倒され……客にはクレーム入れられ、店長には怒鳴られ……そしてまた、後ろ指を指されて笑われる毎日だった……」

「……」

「それでも頑張ったんだ。今は耐える時だ。いつか就職出来れば、この生活も終わりだ。

……そう、毎日自分に言い聞かせてたよ。

そしてついに、僕は就職出来たんだ。小さな会社だったけど、それでも、僕は嬉しかった。これで普通の、落ち着いた生活が出来るって思ったんだ。

……でも、現実は違ってた」

「……それじゃ……」

「そうだよ。そこに待っていたものも、結局地獄だったよ。

怒鳴られ、笑われ、蔑まれ……何も変わらない、苦しいだけの生活だったんだ……」

「……四郎さん……」

「しばらく勤めたけど、最後には鬱になってね。

それを上司に言ったら、あっさりとクビを迫られたよ。

……そしてまた、僕は何もない生活さ……」

「それからはアルバイトしても続かず、その日暮らしの生活だったよ」

「……」

「何のために生きているのかも分からない。ただ生きることにしがみつく毎日。

……それってさ、死んでるようなものなんじゃないの?

そう考えたら、どうでも良くなってきてね。最後に大金で豪遊して、つまらない人生に終止符を打つつもりだったんだ……」

「……それが、強盗とオラ達を誘拐した理由なんですか?」

その問いに、四郎さんは静かに頷いた。

四郎さんの話は、とても辛かった。

それでも、彼の経験した辛さは、桁違いのものだっただろう。

社会の厳しさに飲み込まれ、絶望し……今の彼は、生き方を失っているのかもしれない。

もちろんそれは、犯罪を正当化する理由にはなり得ない。

……それでも、同情せざるを得なかった。

……だけど……

「……四郎さん……オラは――」

「――ふざけないで!!」

「――ッ!?」

「――ッ!?」

突然暗闇の中、ひまわりの怒声が響き渡った。

オラと四郎さんは、思わず声を出すのを忘れ、ただ彼女を見つめていた。

ひまわりは、四郎さんを睨み付けていた。

さっきまでの怯えていた彼女とは、まったく違っていた。力強く、鋭い目つきだった。

こんな眼がひまわりに出来たことに、オラは驚いた。

「ひ、ひまわりちゃん……」

四郎さんも、動揺していたようだった。

ひまわりは、なおも四郎さんに叫ぶ。

「どれだけ辛くたって、どれだけ苦しくたって、それがこんなことをする理由になんてなるわけないでしょ!?

あなたは卑怯だよ!!四郎さん!!自分の環境を、全部他人のせいにしてる!!

――そんなの、卑怯だよ!!」

「……う、うるさい!!うるさいうるさい!!

お前に――お前に何が分かる!!僕が味わった苦しみが、お前なんかに分かるもんか!!」

「辛い思いをしたのは、あなただけじゃない!!誰だって、苦しいことがあってる!!

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