【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「―――そうだね。それは分かってる……」
――ふと、台所から、ひまわりの声が響く。
(ん?)
「……そう……うん……ごめんね……」
どうやら、電話中のようだった。相手はおそらく、風間くんだろう。
盗み聞きをするのもアレだったから、とりあえず二階へと避難することに。
「……でも、やっぱり……そう……ごめんね……」
……何やら、重苦しい口調だった。
なんだろうか。何か、トラブルでもあったのだろうか……。
どうするか悩んだが、あえて声を出してみた。
「……ただいま」
「え――ッ!ご、ごめん!お兄ちゃんが帰ってきた!またあとでね!」
台所の奥から、慌てて電話を切るような会話が聞こえる。
そしてその後、きこきこと音を鳴らしながら、ひまわりは車椅子で出迎えた。
「お、おかえり!今日は早かったね!」
「ああ。ちょっと早く終わってな」
「そうなんだ!ほら、早く着替えてきなよ!」
「……そうするよ」
オラは、家の奥へと向かう。
……やはり、何かあったようだ。
ひまわりの話し方が、無駄に明るい。こういう時は、何かをオラに隠しているパターンだ。
伊達に彼女と長く過ごしているわけではない。彼女の癖など、オラにはお見通しだった。
……問題は、何を隠しているのか、ということ。
話しの感じから、おそらくは風間くんとの何かだろう。
……しかしまあ、男女の仲に親族が首を突っ込むのもアレだったので、オラは気にせず、食事の用意を始めた。
今日のご飯は、焼き魚にしよう。
「――しんのすけさん、昨日はお疲れ様でした」
次の日、出勤するなり、あいちゃんはコーヒーを持って歩み寄ってきた。
スポンサーリンク
「ああ……ありがとう、あいちゃん」
「すみませんでした。本来、あの仕事はしんのすけさんがすべきことではなかったのですが、人手が足りず……」
「いやいや、全然大丈夫だよ。むしろ、久しぶりに思いっきり働いたって感じだったし」
少しオーバーに、手足を伸ばしてみる。
それを見たあいちゃんは、クスクスと笑っていた。
「そう言ってくれると、こちらも気が楽です。……それはそうと……」
ふと、あいちゃんが話題を変えて来た。
「あの、しんのすけさん。……風間さんから、何か話はありませんでしたか?」
「え?風間くんから?……いやぁ、何もないけど……」
「そうですか……。それが先日、噂で聞いたのですが……〇△企業が、海外に新たな支社を作るらしいのですが……」
「〇△企業?風間くんの会社……」
「はい。そしてその支社の経営を、若い者が任されたらしいのです。――その人の名前が……」
「………まさか……」
何か、嫌な予感がした。
オラの顔色が、瞬時に変わったのかもしれない。あいちゃんは、少し躊躇するように、口を開いた。
「……はい。風間……という人らしいのです……」
「………」
……考えるまでもないだろう。それはおそらく、風間くんに違いない。
海外の支社を任される若い社員でその苗字なら、彼しかいないはず。
……でも、もしそれが本当なら……
「………ひまわり……」
思わず、その名前を口にしていた。
あいちゃんは、ただ険しい顔をして、オラを見つめていた。
仕事終わり、家に向かう。
あいちゃんが言っていたことが本当なら、風間くんは海外の支社に向かう。そしてそこに、永住する。
……それなら、ひまわりは……
(……付いて、行くんだろうな……)
そう考えると、心の中に穴が空いた気分になる。
……でも、鳥はいつか巣立ちをして、家族から離れていく。それが、今かもしれない。
それはとても寂しいことだと思う。だけど、それが一番ひまわりが幸せになることだと思う。
それなら、オラは……
「……ただいま」
重い体を引きずるように、家に帰り着いた。
「お帰り!お兄ちゃん!」
ひまわりは、いつもと変わらない笑顔を向けていた。でもこれも、そのうち消えてしまうのかもしれない。
……それに、それは話しにくいことでもあるだろう。オラは、背中を押すことにした。
「……ひまわり」
「うん?どうしたのお兄ちゃん?」
髪を揺らしながら、ひまわりは首を傾げた。
「……風間くんから、何かなかったか?」
「………え?」
ひまわりは、固まった。やはり、話を聞いていたようだ。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51
この記事が面白かったら
いいね!しよう☆
最新情報をお届けします