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【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。

      2016/05/26

――四郎さんだって同じでしょ!?あなたに……私とお兄ちゃんの、何が分かるの!?」

「―――ッ!」

「………」

「お父さんとお母さんが死んで……私は、一人ぼっちになったと思った!!でも、お兄ちゃんが助けてくれた!!私は一人じゃないって言ってくれた!!

私が落ち込まないように、無理して笑いかけてくれてたよ!?」

いつの間にか、ひまわりの目からは涙が溢れていた。オラと四郎さんは、ただ彼女の言葉を受ける。

彼女の言葉は、オラ達の時を止めていた。

「……私、知ってた……お兄ちゃんが、誰もいないところで泣いていたの……知ってた……!!

本当はお兄ちゃんだって……誰かに助けてほしかったんだよ……。

―――本当は、お兄ちゃんだって辛かったはずなのに……お兄ちゃんは笑ってたよ!?

……本当は……お兄ちゃんだって……!!」

言葉の途中で、ひまわりは声を上げて泣き出した。

漏れる息に言葉は飲み込まれ、彼女はそれ以上、何も言えなくなっていた。

「……ひまわり……」

「……だから、なんだよ……。だから、なんなだよ!!」

ひまわりの姿を見た四郎さんは、何かを振り落すかのように声を荒げた。

「……僕には、そんな立派なお兄ちゃんなんていない!!そんな立派な人間にもなれるわけもない!!

誰もが強くなんてないんだよ!!弱い人間だっているんだよ!!

僕だって頑張ったんだ……必死に、頑張ったんだよ!!だけど、うまくいかないんだよ!!

何をしてもダメ!!どれだけ頑張ってもダメ!!全部全部全部……!!

期待しても、結局はみんなうまくいかない!!ぬか喜びだけさせて、あるのはいつもの毎日だけ!!

――そんな毎日なら……それなら……いっそ……!!」

「――いっそ、全部捨ててしまいたい……ですか?」

「―――ッ」

四郎さんの叫びは、たぶん、心の声だったんだろう。

それを聞いて確信した。

……この人は、誰かに助けてほしかっただけだって。

「……四郎さん、オラもね、強くはないんですよ」

「……しんちゃん……」


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「父ちゃんと母ちゃんが死んだとき、オラ、どうすればいいのか分からなかったんですよ。それまで当たり前のようにいた二人がいなくなって……目の前には、泣きじゃくるひま
わりしかいなくて……。

……本当はオラだって、ただ泣きたかったんです。でも、ひまわりがいる以上……お兄ちゃんである以上、それは出来ませんでした。

オラまで泣いてしまったら、この子はきっと、オラよりもどうすればいいのか分からなくなる……そう、思ったんです」

「……お兄ちゃん……」

「……正直ね、すごくキツかったんですよ。感情を素直に出すひまわりを見て、何度も羨ましく思ったんです。

どうしてこの子ばかり泣けるんだろう。どうしてオラばっかり強がらなきゃいけないんだろう……そんなことさえ思うこともありました。

――授業参観も、風邪引いた時も、進路指導も、卒業式も、入学式も……オラの隣には、いつも泣き続けるひまわりしかいませんでした」

「………」

ひまわりは、目を伏せた。それを見ると、やはり胸が痛くなる。

この話は、誰にも話したことがなかった。だけど、今話さないといけないと思った。

「……でも、心が潰れようとした時に、ひまわりはいつも笑うんですよ。笑いながら、お兄ちゃんお兄ちゃんって言って来るんですよ。

何だか笑えませんか?本当はキツいオラに、笑いかけてくるんですよ?

……もう、笑うしかないじゃないですか……そんな顔されたら、どれだけ辛くても、笑い返すしかないじゃないですか……。

……でもね、不思議なんですよ。笑ってると、それまで締め付けられていた気持ちが、何だか楽になるんですよ。

――そん時、オラ気付いたんです。

ひまわりを支えようと思っていたけど、支えられていたのは、オラの方だったって」

そしてオラは、四郎さんを見た。彼はただ黙って、オラの話を聞いていた。

「……四郎さん、あなたを支えてくれる人は、どこかに必ずいます。笑顔を向けてくれる人は、必ずいます。

それは両親だとか友人だとか……あなたの身近に、いるはずなんです」

四郎さんは、項垂れた。そして、手で顔を覆いながら声を漏らす。

「……そんなもの、僕にはいないんだよ。両親からは勘当され、友達もみんな離れていった……。そんな僕に、笑顔を向ける人なんて、いないんだよ……」

「――オラがいますよ」

「………!」

「オラは、四郎さんが、本当は優しい人だって、よく分かっています。それに、父ちゃんと母ちゃんなら、きっとあなたに笑顔を向けていたはずです。

一人だなんて言わないでください。もっと、よく見てください。

――オラ達は、友達じゃないですか……」

「……ありがとう……ありがとう、しんちゃん……」

四郎さんは、その場に崩れ落ちた。顔を隠していた手を力なく下げ、涙を流すその顔を、ただオラ達に見せていた。

「……四郎さん。友達として、もう一度お願いします。――もう一度、やり直しましょう。

これから先、きっとあなたなら頑張れるはずです。でももし辛くなったら、いつでもご飯を食べに来てください。

父ちゃんと母ちゃん、オラとひまわり、そしてあなた……5人でテーブルを囲んだあの日のように、また一緒に、ご飯を食べましょう」

「……うん……うん……!」

「……自首、してください。オラも一緒に、付き添いますから……」

「……あああ……うあああああ……!!」

四郎さんは、その場で泣き崩れた。床に額を押し当て、ただただ慟哭を響かせていた。

彼の持ってきてたライトは、気付かない間に電池が切れていたようだ。

それでも、いつの間にか、外からは月の光が差し込む。

そして月光のスポットライトは、床に転がる刃物を照らす。

鈍く仄かに光を反射していたが、それはどこか、寂しい光だった。

その後、四郎さんはオラ達を解放し、地元の警察署へ自首した。

オラも、それに同行した。

受付にことの詳細を説明すると、警察官は驚きながらも四郎さんを連れて行った。

『……しんちゃん、僕、罪を償うよ。そして、もう一度頑張ってみるよ……』

彼は、最後に微笑みながらそう言った。疲れ切っていたが、その顔には、どこか生きる強さを感じた。

彼を見送った後、オラもまた事情を聞かれた。

狭い部屋に案内され、調書を取られる。

調書を取った刑事さんは、オラにこう言ってくれた。

『どんな理由があるにせよ、彼のしたことは簡単に許されることではありません。

……でも、彼は罪を償おうとしている。そこに、大きな意味があります。彼は、きっとやり直せますよ―――』

思わず、頭を下げた。

四郎さんが起こした事件は、こうして幕を閉じる。

しかし、これもまた、今の社会を表すものなのかもしれない。

世の中、うまくいくことなんて少ない。辛い毎日が続いたり、連続で不幸が訪れることなんてしょっちゅうだ。

それに耐え続けるのは、誰であっても顔を伏せてしまうこともあるだろう。時には耐えきらず、どうすればいいのか分からなくなるだろう。

……だからこそ、笑うんだ。不幸なんて吹き飛ばして、笑うんだ。

そうすれば、きっと何かが生まれるはずだから。それを見た人も、きっと幸せになるはずだから。

だからオラは、四郎さんを待とうと思う。そして彼が、全てを償った時、笑顔で出迎える。

それが、オラが四郎さんに出来る、友人として出来る、最善のことだと思うから……

ひまわりは先に家に帰っていた。

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