【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「……しんのすけさん。ひまわりちゃんが風間くんに付いて行くということは……」
「――あいちゃん。今は、二人を祝福しよう。そして、笑顔で見送るんだよ」
「……はい」
あいちゃんは、沈んだ表情のまま小さく頷く。
……ひまわりの結婚式は、間もなくだ。
~式当日~
「――しんちゃーん!」
外にいたオラへ、まさおくん、ねねちゃん、ぼーちゃんが声をかける。
振り返れば、そこには、スーツやドレスを着こなした、笑顔の三人が。
……笑顔、ということは、まさおくんは、まだねねちゃんの本当の気持ちを知らないようだ……
「ん?どうしたのしんちゃん?なんか顔に付いてる?」
まさおくんは、不思議そうな顔をしていた。
「……いや、なんでもないよ。それより、今日は来てくれてありがとう。ひまわりに代わって、お礼を言うよ」
「何言ってんのよ。風間くんとひまわりちゃんの結婚式じゃない。たとえ嵐が来ても来るわよ」
「うん。僕も、二人を見てみたい」
ねねちゃん、ぼーちゃんは笑顔で返事を返す。
「僕もだよ。……もちろん、次は僕だけどね……」
まさおくんはボソリと呟きながら、頬を染めてねねちゃんを見ていた。
(まさおくん……“知らぬは仏、見ぬが神”とは、よく言ったものだな……)
心の中でまさおくんに合掌をしながら、頭を一度下げた。
会場に来たのは、ねねちゃんだけじゃない。
ななこさん、園長先生、むさえさん……色んな人が、そこにいた。これまでオラ達が出会ってきた人たちが、笑顔でそこにいた。
この式は、かなりの急なスケジュールで開催されている。
それにも関わらず、これほどまで人が集まったことには、感謝してもしきれない。
(ひまわり……風間くん……。みんな、祝福しているよ)
思わず、青空を仰ぎ、準備をしているはずの二人に言葉を向けた。
それに応えるように、空には番いの鳥が、仲睦まじく飛び回っていた。
スポンサーリンク
みんなが笑顔で見送る中、式は始まった。
白いタキシード姿の風間くんと、純白のウェディングドレスを着たひまわり……風間くんは、車いすのひまわりを後ろから押しながらバージンロードを歩く。
風間くんはさることながら、最初にひまわりの姿を見た時には驚いた。
ひまわは、とても綺麗だった。
これまで一番近くで見ていたはずだった。でも、目の前にいるのは、間違いなく一人の女性だった。
純白に包まれた彼女の姿を見ていると、何だか感慨深くなる。
ずっと子供のように見ていたが……いつの間にか、彼女は大人になっていたようだ。
式が終わると、簡単なパーティーへと移る。
ひまわり達の結婚式が主ではあるが、どちらかというと、同窓会のようにも見える。
もちろんパーティーの中心にはひまわり達がいたが、それぞれの近況を報告し合い、酒を交わし、昔話に花を咲かせる……その光景には、温かみがあった。会場全体が、緩
やかな時間の中にあった。
それを満足そうに眺めていると、突然、会場が真っ暗になった。
ざわざわとする会場の中、スポットライトがオラとひまわりを照らし出した。
(……なんだ?)
会場中の視線を受ける中、車いすに座ったひまわりは、風間くんが持つマイクに向けて話す。
「……会場のみなさん。今日は、私達の結婚式に出席していただき、本当にありがとうございます。
――皆様には申し訳ありませんが、今日この場にいる、私のお兄ちゃん……兄に、言葉を送りたいと思います。
少しの間、お付き合いください……」
会場中は、水を打ったように、静まり返る。全員が話を中断し、彼女に視線を送っていた。
その中で、ひまわりは手紙を手にし、静かに、囁きかけるように、読み始めた。
――お兄ちゃんへ。
お兄ちゃん、今日まで本当にありがとう。
考えてみれば、私はお兄ちゃんに甘えてばっかりでした。いつもお兄ちゃんにくっ付いて、泣いて、笑って、怒って、落ち込んで……それでもお兄ちゃんは、ずっと私を見てくれ
て……。
授業参観も、学芸会も、合唱コンクールも、卒業式も、入学式も……いつも、私を見てくれていました。
……本当に嬉しかった。
いつも泣きそうな時、傍にはお兄ちゃんがいてくれて、涙を拭ってくれました。そして言うんです。
“行こうか、ひまわり”――
座り込む私の手を掴んで、立ち止まる私を引っ張ってくれるんです。その手はとても暖かくて、とても安心できて……
ケンカした時も、次の日にはご飯を作ってくれてるんです。
不器用に、不愛想に笑いながら、美味しいか言ってくれるんです。
お兄ちゃん……あなたの妹で、本当に良かった。本当に幸せだった。
……今の私があるのは、お兄ちゃんのおかげです。
ずっと、大好きです。ありがとう、お兄ちゃん――――
――手紙の最後は、声に涙が混じり、うまく話せていなかった。
それでも、会場中が暖かい拍手に包まれていた。
オラは下を向き、ただ拍手を受ける。本当はひまわりに言いたかった。
お礼を言いたいのは、オラの方です――と。
でも前を向けなかった。兄としての意地なのかもしれない。
流す涙を、彼女には見せたくなかった。最後まで、笑顔を向けていたかった。
それでも、少しだけ視線を彼女に向ける。
――ひまわりは、微笑んでいた。
優しい雫が伝う顔で、ただ優しく、オラの方を見ていた。
彼女は、やっぱり太陽だった。優しく照らしてくれる太陽だった。
何度もオラのを救ってくれた、勇気付けてくれた、光あふれる、向日葵だった……
その姿を見ていると、益々彼女の姿を見ることが出来なくなってしまった。
……その後パーティーは、恙なく幕を下ろす。
そしてそれから2週間後、ひまわりは、風間くんと旅立っていった……。
――お兄ちゃんは、いつまでもお兄ちゃんだからね――
――しんのすけ、ひまわりちゃんは、必ず幸せにするよ。……男として、親友として、お前に約束する―――
空港での別れ際、二人はそう言っていた。
正直、何も心配はしていない。
あの二人なら、きっと幸せになれる……その確信が、なぜかオラにはあった。二人をよく知るオラだからこそ、そう思えた。
「……ふう。ちょっと休憩……」
家を片付けていたオラは、大きく体を伸ばす。
ひまわりの荷物は、ほとんど送っていた。彼女に部屋だった場所には、机とベッドしか残っていない。
「……」
少し、家の中を歩いて回る。
色々な思い出が詰まった、慣れ親しんだ家。
オラがいて、ひまわりがいて、父ちゃん、母ちゃん、シロがいた家……
(……こんなに、広かったっけ……)
たった一人の主を持つ家は、とても広く思えた。でもそれ以上に、とても静かだった。
(……ん?)
……ふと、柱の隅に傷を見つけた。柱の腰の位置ほどに付いた、古びた傷……
そして、昔のことを思い出した。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51
この記事が面白かったら
いいね!しよう☆
最新情報をお届けします