【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「……な、なんですか?」
「………」
彼女は何も言わない。ただ黒い瞳を、オラに向けていた。見ていると、何だか吸い込まれそうになる……
――と、その時……
「―――しん…様?」
「……はい?」
女性は、オラにそう話しかけて来た。
その呼び方をする人は、オラの知る限り一人しかいない……それは……
「……もしかして……あい、ちゃん?」
すると彼女は、それまでの凛々しい態度を一変させ、その場で飛び跳ねてはしゃぎ始めた。
「やっぱりそうだ!――そうです!あいです!酢乙女あいです!お久しぶりです!しん様!」
……工場内には、どよめきが走った。
「――はい、あいちゃん」
休憩所の中で、オラはあいちゃんにコーヒーを手渡す。
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「ありがとう、しん様」
「このコーヒー、スーパーの特売品だから、あいちゃんの口に合うか分かんないけど……こんなものでゴメンね」
するとあいちゃんは、首を振って笑顔を向けて来た。
「そんなことないです。しん様が入れてくれたものですもの。それだけで心が満たされます」
そしてあいちゃんは、コーヒーをすする。
「……うん。悪くありません」
「ありがとう、あいちゃん。……ところで、そのしん様って呼び方、どうにかならないかな……」
「……嫌、ですか?」
「嫌というか……なんか、恥ずかしいし……」
「………」
しばらく考え込んだあいちゃんは、口を開いた。
「……分かりました。今日からは、しんのすけさんとお呼びいたします」
「助かるよ……」
彼女は、微笑んでいた。そんな彼女に、オラも微笑みを返した。
「――それにしても、このようなところでしん様……失礼、しんのすけさんと再会するとは、夢にも思いませんでした」
「オラもだよ。まさか、この工場の元請けがあいちゃんの会社だったなんて……しかも、あいちゃんが視察に来るとは思いもしなかったよ。世間って狭いね」
「そうですわね。……でも、だからこそ人生とは楽しいのかもしれません」
あいちゃんとオラは、感慨深く話していた。
「……でも、あいちゃんは変わらないね。とても凛々しくて、カッコいいよ」
「そんな、しんのすけさん……それを言うなら、しんのすけさんもですよ」
「オラは……そんなことないよ。だって、昔みたいにバカやってるわけじゃないしね。ガッカリしたでしょ?」
「いいえ!そんなことありません!」
あいちゃんは、語尾を強くしてオラの方に体を向けた。
「確かに、今のしんのすけさんは変わられました。でも、それはいいことなんです。
人は、時間の流れと共に、年齢を重ね、体を変化させていきます。
――ですが、心は違います。
心だけは、成長するか否かは、その人自身にかかってます。若くして立派な心を持つ者もいれば、歳だけを重ねて、いつまでも心を成長させない者もいます。
……しんのすけさんは、きっと前者です。しんのすけさんは、歳相応に心も成長しているんです。
そんなしんのすけさんは、素敵だと思います……」
「あいちゃん……ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。そんな自覚はないけどね」
「いいえ。しんのすけさんは、やっぱりしんのすけさんですよ。行動が変わっても、それは変わっていません」
あいちゃんは、微笑みながらそう言ってくれた。
そんな彼女の言葉に、どこか救われた気がした。
父ちゃんと母ちゃんがいなくなってから、オラはしっかりしようと思った。
オラがしっかりしないと、ひまわりを育てることが出来ない。そう思っていた。
それでも、オラの中には不安があった。自分はきちんと出来ているだろうか。大人として、ひまわりの手本のとなれるだけの人になっているだろうか。そんなことを考えてい
た。
そしてあいちゃんは、オラのそんな不安を払拭してくれた。
それが、とても嬉しかった。
「ところでしんのすけさん。あなたは確か、中小企業で働いていたのではありませんか?どうしてこの工場で……」
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