spread-story

【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。

      2016/05/26

「……おい、これって……」

「……嘘、だろ……」

皆一様に、掲示板に張り出された通知を凝視する。

そこに記載されていたのは、従業員削減の通知――つまりは、リストラ予告だった。

今のところは小規模のようだ。

各課1~3名が選ばれる。そしてオラがいる部署は、たった一人だ。

しかし、オラの部署には家族持ち世帯が大多数だ。

最近結婚した者、子供が生まれたばかりの者、子供が小学生に入学したばかりの者……それぞれに、それぞれの暮らしがある。

「……課長……」

「……ああ、野原か……」

廊下のソファーに、課長が項垂れて座っていた。オラはその隣に座る。

「……課長、リストラって……」

「……ああ。私に、一人選ぶように言われたよ。まったく、部長も酷なことを言ってくれる。

私に、選べるはずもないじゃないか……みんな、可愛い部下なのに………」

「………」

課長は、目頭を押さえていた。目の下にはクマも見え、頬もやつれているように見える。課長も、かなり悩んでいるようだ。

「……いざとなれば、私が……」

「でも課長、先日お子さんが私立の中学校に入学したばかりじゃないですか……」

「……野原、家庭の事情は、人それぞれだ。誰も辞めたくないに決まってる。それでもな、誰かを選ばないといけない。それならば、いっそ……」

課長は、語尾を弱める。覚悟と迷い……その両方が、課長の中に混在しているようだ。

――そうだ。誰でも、家庭がある。日常がある。その誰かが辞めなければならないなら……それなら……

「……課長……」


スポンサーリンク





「……?」

「……オラが、辞めます」

「な、何を言ってるんだ野原!」

「誰か辞めないといけないなら、オラが辞めます。オラは、まだ結婚していませんし」

「し、しかし!妹さんがいるだろう!?」

「妹は働いていますし、何とかなりますよ。それに、オラまだ若いので、次の仕事も見つけやすいですよ」

「……だ、だが……!!」

「――課長、ここは、オラにカッコつけさせてくださいよ」

「……」

「……」

課長は一度オラの顔を見て、もう一度項垂れた。そして……

「……すまない、野原……すまない……」

課長の声は、震えていた。

オラは分かってる。一番辛いのは、誰かを選ばなければならない課長自身であることを……

だからオラは、あえて笑顔で答えた。

「……いいんですよ、課長。これまで、お世話になりました―――」

課長は、何も答えなかった。

誰もいない廊下には、課長の涙をこらえる声が聞こえていた。

そしてオラは、無職になった――――

「――あれ?」

仕事を出る前のひまわりが、オラの様子を見て疑問符を投げかける。

「お兄ちゃん、今日はかなりゆっくりだね。まだスーツじゃないなんて……」

「え?あ、ああ……すぐ着替えるよ。――それより、急がないとまた遅刻するぞ?」

「――あ!うん!」

ひまわりは食パンを片手に、玄関を飛び出していった。

彼女を見送った後で、オラは仏壇の前に座る。

「……父ちゃん、母ちゃん。オラ、会社辞めちゃったよ。小さい頃、父ちゃんにリストラリストラって冗談で言ってたけど、実際そうなると笑えないね」

仏壇に向け、苦笑いが零れた。

「……でも、今日からでも仕事を探してみるよ。……分かってる。ひまわりには気付かれないようにするから。あいつ、ああ見えて心配性だし……」

そして立ち上がり、いつもよりもゆっくりとスーツを着る。

とにかく、片っ端から面接を受けるしかない。そのどれかが当たれば、それに越したことはない。

大丈夫。きっと、大丈夫だ……

オラは、自分にそう言い聞かせながら、家を出た。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51

この記事が面白かったら
いいね!しよう☆

最新情報をお届けします

 - 感動