【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「……あいちゃん、キミは、ちゃんと愛されているよ。そしてその人は、キミを待ってくれているよ」
「………」
「……だから、家に帰ろう。キミを待つ人のところへ。キミがいるべき場所へ。
オラも、一緒に行くからさ」
「……はい……はい……」
あいちゃんの口から、微かに声が漏れる。
電車の音に掻き消されて、よく聞こえない。……ただ、その声は、僅かに震えていた。
そして隠すかのように俯いた彼女の顔からは、雫が垂れ落ちる。
ポタリ……ポタリ……と、降り積もった雪が春の訪れと共に溶け出すように、零れていた。
それは、きっと暖かいものだ。そしてきっと、彼女の心から溢れ出たものだろう。
そんなオラ達を乗せた電車は、一定の速度で走り続ける。
……まもなく電車は、春日部に到着する頃だ。
その後あいちゃんは家に帰って行った。
入り口の立派過ぎる門のところには、大量のメイドさんと、優しそうな笑みを浮かべる女性、それと、初老の男性……
二人の姿を見た瞬間、あいちゃんは駆け寄り、男性の胸に飛び込んで泣いていた。
そんな彼女を、両親は優しく抱擁する。
……その姿を見て、少しだけ羨ましかった。それでも、オラの心は温かくなっていた。
家族のひと時に、部外者のオラがいつまでもいるのは無粋。
オラは静かに、一人家に帰った。
そして次の仕事の日……事件は、起こった。
「――おはようございます……」
仕事場に出勤したオラだったが、さすがに前日海で遊びまくったせいか、体中が痛い。
オラももう歳なのかもしれない。少しは体を労わるようにしなければ。
それはそうと、さっきから人に見られまくっている。
エントランスホールにいる従業員は、皆がオラを見るなり隣に立つ人とひそひそ話を始める。
その光景は、正直いいものではない。
何か顔にでもついているのだろうか……はたまた、間違えて寝間着でも着て来たのだろうか……
少しだけ背中を丸めたオラは、足早にあいちゃんの事務室に向かった。
途中通る廊下の掲示板には、至る所で人だかりが出来ていた。何があったのかは気になったが、とにかく人が来ないあの部屋を目指した。
「――おはよう、あいちゃん」
入り口を開けて、あいちゃんに挨拶をする。
オラに気付いたあいちゃんは、座っていた席から立ち上がり、オラの元へ駆け寄って来た。
「――おはようございます、“あなた”」
「うん、おはよう……って、あなた?」
「はい。あなた、です」
ニッコリと微笑みを向けるあいちゃん。しかして、なぜ急にあなたと……
「ええと……なんでオラを“あなた”って言うの?」
「はい。……これです」
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「これ?」
あいちゃんは、一枚の紙を手渡してきた。
「……………あいちゃん、これって……」
そこに書いてある文字を、オラは4度見ほどしてみた。しかし、何度見ても同じことが書いてあった。
『祝!酢乙女あい、婚約!』
「……あいちゃん、結婚するんだ……」
「はい」
「へえ~。……誰と?」
「それはもちろん、しんのすけさんとです」
「……ああ、なるほど。やっぱりそうか……」
それは予想していた通りの返答であった。何しろ、しっかりと書いてある。
――『お相手は、酢乙女グループ特別顧問、野原しんのすけ』と……
「ああ、なるほど。オラがあいちゃんと婚約ね。
オラが…あいちゃんと…………って、ええええええええええええええええええ!!??」
朝一の事務室では、オラの叫び声が響いていた。
「ちょっとあいちゃん!これ、どういうこと!?」
オラはあいちゃんに詰め寄る。
「どうもこうも、そういうことです」
あいちゃんは、相変わらずにっこりと笑っていた。
「いやいや…いやいやいやいや!なんで急にこんなことになってるの!?」
「……実はですね、私の父が、しんのすけさんのことを大変気に入っていまして……」
「……それで?」
「好きかと聞かれて、大好きですと答えまして……」
「……それで?」
「結婚することになりました」
「いやおかしいから!!色々飛び過ぎだって!!」
「あら。ちゃんとご家族にも確認を取りましたよ?」
「か、確認?」
「はい。ひまわりさんに。しんのすけさんと結婚したいと言ったところ、『あんな兄で良ければ、じゃんじゃん結婚してやってください』って言われましたし」
「それ、家族だけど、オラへの確認は!?」
「そんなもの必要ありません。私としんのすけさんが結婚することは、すでに決定事項ですし」
「えええ……」
「……あら、もうこんな時間。すみませんが、会議に出席してきます」
あいちゃんは、愕然とするオラを置いて、部屋の出入り口に向かって行った。
「ちょ、ちょっとあいちゃん!まだ話は―――」
「――しんのすけさん。一つ、言っておきますね」
部屋の入り口を開けたところで、オラの方を振り返る。
そして、不敵な笑みを浮かべた。
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