【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「ああ、ぼーちゃんか……仕事帰り?」
「うん。……ねえ、しんちゃん」
「うん?なに?」
「……ちょっと、いい?」
ぼーちゃんは、何かを訴えるかのような目をしながら言ってきた。
何か、話があるのだろうか……
ぼーちゃんに誘われるまま、オラ達は近くのファミレスに移動した。
ファミレスの中は、客が疎らだった。
ぼーちゃんはコーヒーを飲みながら、小難しい顔をしていた。
「それで……ぼーちゃん、話があるんでしょ?」
「……うん」
ぼーちゃんはコーヒーカップを置き、オラを見た。
「……僕、この前、風間くん達を見た」
「……え?」
「公園で、話してた。……ひまわりちゃん、泣いてた」
ぼーちゃんは、沈んだ表情でそう話す。
「……ひまわりが……どんな話かは、聞いたの?」
「詳しくは、聞けなかった。……でも、二人とも、とても悲しそうだった……」
「……そう……」
おそらくは、ひまわりとぼーちゃんが言うことが本当なら、たぶん別れ話をしていたんだろう。
そして、ひまわりは泣いていた―――それが意味することは、おそらく一つしかないだろう。
思案に耽っていたオラに、ぼーちゃんは声をかける。
「……僕、二人のことは、よく分からない。何があったかも、分からない。
でも、二人に、あんな顔、してほしくない。それは、しんちゃんも同じだと思う」
「ぼーちゃん……」
そしてぼーちゃんは、もう一度コーヒーを飲む。
「しんちゃん……キミは、僕の大切な友達。キミのことを、信じてる……」
ぼーちゃんは、それ以上何も言わない。
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……いいや、きっとそれだけで十分だと思ってるんだ。オラを、信じてるんだ……。
「……分かったよ、ぼーちゃん。オラ、やってみるよ」
少し大きく、返事を返す。ぼーちゃんは、ニコリと笑っていた。
数日後、オラはとある公園にいた。
空はあいにくの雨。視界に斜線を入れるかのように、雨が降り続いている。
当然、公園に他の人はいない。
掻き消されているのか、降りしきる雨の音以外、何も聞こえなかった。
その中で、傘をさしてベンチに座る。
実のところ、オラは雨の日が嫌いではない。
雨粒を受けた木々、花々は天の恵みを受け生き生きと存在感を示す。濡れたアスファルトからは、普段とは違う、そう、雨の匂いがしていた。
この風景を見ていると、どこか落ち着いて来る。
天の恵み……なるほど、その言葉も納得できる。
「……しんのすけ」
ふと、雨音に紛れるように、オラの名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声の主は、誰だか分かっていた。なぜなら、オラが呼んだからだ。
オラはその人物の方を向く。
「……やあ、待ってたよ、風間くん……」
「………」
風間くんは、何も言わずに立っていた。
スーツ姿にビジネスバッグ、黒いコウモリ傘をさしている。
その表情は、薄暗く空のかかる、雨雲のようだった。
「……とにかく、座りなよ」
「……ああ」
ベンチに座るよう促すと、濡れたベンチを気にすることもなく、風間くんは座った。
そしてオラ達は、しばらくの間、会話を忘れて水に潤う情景を眺めていた。
少し時間が経った頃、風間くんの方を見る。
どこか落ち着かない様子で、表情を伏せていた。
……それも、無理もないのかもしれない。
「……いきなり呼び出したりして、ごめん」
「……別にいいよ。それよりしんのすけ。用件、なんだよ」
風間くんは、目の前の景色を見つめたまま、急かすように訊ねる。だがその口調から、おそらくは、用件など分かっているようだった。
「ああ……。風間くん、この公園に、見覚えあるよね?」
「……」
「こんなところに呼び出したのは、“あの日”のことを聞こうと思ったんだ……」
「……まあ、そうだろうって思ったよ。まったく、誰に聞いたんだか。よりによってここに呼び出すなんてな。
――しんのすけ、ちょっと冗談が過ぎるぞ」
風間くんは、ようやくオラの方を向いた。
一つは、オラの用件が予想通りだったことから、開き直ったのかもしれない。
……ここは、ぼーちゃんが、ひまわりと風間くんを見た公園だった。
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