【日本中が涙した】22年後のクレヨンしんちゃん。 「しんのすけ」と「ひまわり」の成長した姿に涙。。。
2016/05/26
「今日さ、聞いたんだよ。風間くんが、海外に行くことを……もちろん、聞いてるんだろ?」
「………」
ひまわりは、表情を落としていた。
それから、オラ達の間に沈黙が流れる。居間の方から、テレビの音が小さく聞こえるだけだった。
玄関に立つオラ。廊下で動かないひまわり。
――とても、長い時間が流れたように感じた。
「……ひまわり……あのさ―――」
「――別れたよ」
ひまわりは、オラの言葉を遮るように、早口でそう言った。
「……え?」
「私達、もう別れたの。言ってなくてごめん」
「い、いや……別れたって……」
「――ほらお兄ちゃん!晩御飯出来てるから、ご飯にしよ!私、お腹空いちゃった!」
そう言うと、ひまわりは再び笑顔をオラに見せ、奥へと向かう。
「お、おい!ひまわり!」
彼女は、オラの呼び掛けには答えなかった。
(……別れた……別れたのか?)
その時、オラの中では二つの想いが入り混じる。
二人が別れたことの動揺。残念さ。……そして、少しの安堵感。
その安堵感を感じたオラは、無性に自分が許せなく思った。
だけど、どうすればいいのかも分からず、唇を噛み締めたまま立ち尽くしていた。
次の日も、また次の日も、ひまわりは変わらない日々を過ごしていた。
あれ以降、その話題に触れることはない。
ひまわりが、一切その話題に触れることはなかった。何も話さず、ただ日常の光景が繰り広げられるだけだった。
……いや、それは卑怯な言い方だろうな。
ひまわりが話さないんじゃない。オラが、聞かないだけだった。
たぶん、心の中では、このまま風間くんと別れて、ひまわりがずっといてくれることを望んでいるのかもしれない。
でも、胸の中にあるモヤモヤは、全く取れない。
行って欲しくないという気持ちと、曇りがかった憂い……その両方がオラの中に混在し、頭の中をグチャグチャにさせる。
……これじゃあ、どっちが保護者なのか分かったもんじゃない。
こんなにオラは、頼りない奴だったのだろうか。何だか自分が自分じゃない気持ちだった。
……そして、オラはまた、実体の掴めない気持ちに揺らされる毎日を過ごしていた。
「――そうですか……ひまわりちゃんが……」
「はい……」
仕事の休憩中、オラは黒磯さんに、自分の胸の内を打ち明けた。
黒磯さんは、嫌な顔一つせず、オラの愚痴のような話に付き合ってくれた。
「……私自身、そういう恋愛沙汰は疎くて……何とも言えないところはありますね。
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ただ、それは本当に、ひまわりちゃんが望んだことなのか――それが気になります」
「……どういうことですか?」
「………」
黒磯さんは、何かを考える。目はどこかを向き、まるで言葉を防ぐかのように、手を口に添えていた。
「……それは、今はまだ分かりません。
それよりも、私としては、別のことが気になりますね」
「別のこと?」
「……あなたのことですよ、しんのすけくん」
「お、オラ?」
「……人は、何か複数の選択肢で悩む時、答えは、既に決まってるものなんですよ。悩むのは、その確認作業なんです。
これで本当にいいのか分からない。そうしたいが、それが正しいのか分からない。
だからこそ、人は誰かに救いを求め、教えを乞うのです。そして、自分の判断の正しさを検証するのです」
「………」
「……さて、しんのすけくんは、どちらに決まっているのですか?もちろん、その答えは、しんのすけくんにしか分かりません。
ただ、私の知るあなたなら、きっと後は足を踏み出すだけなんです。何しろあなたは、お嬢様が認めた人物なのですから」
「……黒磯さん……」
話し終えた黒磯さんは、微笑みだけを残して立ち去って行った。
彼の話は、オラの体深くに響いていた。
……本当は決まっているはずの、オラの気持ち……
でも今のオラには、いくら考えても分からなかった。
仕事を終え、帰宅する。
しかし家とは別の方向に歩いていた。このまま素直に家に帰るのは、少し複雑だった。
フラフラと商店街を歩く。
一体どうすればいいのか、改めて自分に聞いてみる。……返事は、出来なかった。
「――しんちゃん」
ふと、後ろから話しかけられた。
「……ん?」
後ろを振り返ると、そこにはぼーちゃんがいた。
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